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2007年10月13日 (土)

河童のいる検見川送信所

昔々、検見川送信所の近くに流れる花見川の、とりわけきれいな花島という町に河童が住んでいた。



ある日、河童の親子が花島から海へと下っていくと、天に向かって高く伸びる鉄の棒が見えた。

人間たちはアンテナと呼んでいたけれど、子どもの河童には何のことやら分からなかった。
お父さん河童に聞いた。

「あれは何?」
「送信所というんだよ」
「送信所って、何?」
「世界中の人たちと話ができるんだ」
「世界って?」
「僕たちが住んでいる所よりももっと大きな場所があるんだよ」
「すごいね。そこにはどうやったら、行けるの?」
「川より大きい海というのがあって、その海を越えていくのさ」
「どうやって?」
「僕たち河童と違って、人間は泳ぎがうまくないから、船というものに乗っていくのさ」
「へぇ」
子供の河童の好奇心は尽きなかった。お父さんがいう「世界」にも河童はいるのだろうか?

「でも、送信所があれば、海を越えなくても、世界の人たちと話すことができるんでしょ?」
「そうだ」
「すごいね」

それから、子供の河童は毎晩、お父さん河童にいろんな話をして、とせがんだ。しかし、海を見たいという願いは聞き入れてもらえなかった。

河童と人間は昔、仲良しだったけれど、最近では、人間は河童なんていない、作り話だということになっている。海なんか出掛けて、人間に見つかったら、どんなことになるやら。
お父さん河童はそんなことを思った。

しかし、子ども河童があまりに世界のことに興味を持つものだから、お父さん河童は子ども河童を送信所に連れていくことにした。

お父さん河童も、道には詳しくなかったが、送信所に行くことは簡単だった。だって、遠くからはっきり見えたから。

イモ畑を抜けていくと、真っ白な局舎が見えた。局長室だけに光が灯っている。何やら、忙しくしているらしい。

アンテナは天に向かい建ち、線はさらに四方と結んでいた。
「アンテナって、蜘蛛の巣みたいだ」と子ども河童は言った。

光の灯った部屋を指し、「いま、世界中の人とお話ししているのかな?どんな話をしているのだろう?」子ども河童は会ったこともない世界の河童のことを思った。

2人の河童は15分くらい、いただろうか、この日は曇りだったが、急に雲間から月が顔を出した。満月だった。

それはとても幻想的な風景だったが、月明かりは河童たちには危険すぎた。人間に見つかってしまう。

「さあ、帰ろう」

お父さん河童は子どもの手を引っ張って、川に向かって走った。子ども河童は何度も振り返って、送信所を見た。


それから、何十年後の現代。

その時の子ども河童は、充分に大人の河童になった。花見川も以前より開発が進んで、河童には住みにくくなったが、それでも、花島には美しい風景が残っていた。

ある時、川に一枚の紙が浮いていた。そこには昔見た送信所の写真が載っていた。

懐かしいなぁ。その河童は真夜中、危険を承知で送信所に向かった。アンテナは1本もなくて、目印はなかった。

イモ畑もなく、緑も少ない。人目を気にしながら、迷いながら、河童は苦労しながら、送信所にたどり着いた。確かにアンテナはなかったけれど、あの建物はだけはあった。

昔はあんなにきれいな建物だったのに、とは思ったけれど、建物が残っているのには、なんだかホッとしたのだった。

<おしまい>

千葉県内にお住まいの河童画人の牛玖ひろしさんが、こんな素敵な送信所の絵を書き下ろしてくださいました。この物語は牛玖さんの絵にインスパイアされ、僕が書き下ろしたものです。

牛玖ひろしさんのブログはこちら。こちらには別の物語があります。



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検見川送信所」カテゴリの記事

コメント

TITLE: Re:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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ほのぼのとホッとする素敵なお話、ありがとうございました。



花見川周辺の自然も、送信所も、守りたいですね!

投稿: ソフィア | 2007年10月13日 (土) 15時58分

TITLE: Re[1]:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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ソフィアさん

>ほのぼのとホッとする素敵なお話、ありがとうございました。



ブログとしては長い文章を最後まで読んで頂きありがとうございます。



>花見川周辺の自然も、送信所も、守りたいです

>ね!



花見川では、いろいろと工事をしていますが、環境的な影響はないのかなぁ、とちょっと心配しています。

投稿: 久住浩 | 2007年10月13日 (土) 22時26分

TITLE: Re:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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こんばんは。

良い話ですね。

なんか子供の頃を思い出しました。

素朴な夢のあるお話、子供の頃愉快に聞いたものです。

一枚目の写真、綺麗ですね(^^)

投稿: アンビンバンコ | 2007年10月13日 (土) 23時10分

TITLE: Re:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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送信所のそばで河童たちが好物のキュウリを手に

踊りに興じている。

物語も絵もほのぼのとしていて良いですね。

いろんな方たちが「検見川送信所保存計画」につながっていくことが素晴らしいです。

投稿: まさやん0386 | 2007年10月14日 (日) 15時51分

TITLE: Re[1]:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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アンビンバンコさん

>こんばんは。



こんばんは。



>良い話ですね。



ありがとうございます。物語は僕の書き下ろしです。



>なんか子供の頃を思い出しました。

>素朴な夢のあるお話、子供の頃愉快に聞いたものです。



そうですね。そんなイメージです。

牛玖さんの絵を見ていたら、パッと思い浮かびました。



>一枚目の写真、綺麗ですね(^^)



実際の花見川です。花島町付近です。ここは絶景です。

投稿: 久住浩 | 2007年10月14日 (日) 17時44分

TITLE: Re[1]:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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まさやん0386さん

>送信所のそばで河童たちが好物のキュウリを手に

>踊りに興じている。

>物語も絵もほのぼのとしていて良いですね。



ありがとうございます。



実際、昔は送信所には池があったそうです。



絵で言うと、右側ですけどね。



>いろんな方たちが「検見川送信所保存計画」につな>がっていくことが素晴らしいです。



河童画人の牛玖さんからメールをいただいた時に、

河童が送信所で月見をしている絵があったら、いいなぁとさりげなくおねだりをしたら、書いてくださったんです。



ユニークでいいですよね。



イベントのときに飾らせていただけないですか? とさらにおねだりしています(笑)。

投稿: 久住浩 | 2007年10月14日 (日) 17時50分

TITLE: Re[2]:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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久住浩さん、こんばんは。

>>良い話ですね。

>ありがとうございます。物語は僕の書き下ろしです。



>この物語は牛玖さんの絵にインスパイアされ、僕が書き下ろしたものです。

この一行を見落としてしまいつつ純粋にそう感じました。



>牛玖さんの絵を見ていたら、パッと思い浮かびました。

文才とはこういうことをいうのでしょうね。

素晴らしいです。

投稿: アンビンバンコ | 2007年10月14日 (日) 21時29分

TITLE: Re[3]:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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アンビンバンコさん



>>この物語は牛玖さんの絵にインスパイアされ、僕が書き下ろしたものです。



>この一行を見落としてしまいつつ純粋にそう感じました。



それは光栄です。実はこの文、後から書き足しました。絵と一緒に文章も送られてきたのではないかと思っていた、といわれ、分かりにくかったなと思って。



>文才とはこういうことをいうのでしょうね。

>素晴らしいです。



ありがとうございます。恐縮です!

投稿: 久住浩 | 2007年10月15日 (月) 02時18分

TITLE: Re:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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素敵なお話ですね。



私も田舎の出身です。川や沼、お堀などで子供の時分遊んだときは、河童ともきっと会っているのだろうと思います。記憶は残念ながらありませんが。



彼らにとっては住み難い時代かも知れませんね。せめて送信所のような歴史ある建物を残すくらいは、できるといいですね。

投稿: しぇるぽ911 | 2007年10月15日 (月) 12時25分

TITLE: Re[1]:●河童のいる検見川送信所(10/13)
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しぇるぽ911さん

>素敵なお話ですね。



ありがとうございます。

かっぱ画人さんの絵があってこそです。



>私も田舎の出身です。川や沼、お堀などで子供の>時分遊んだときは、河童ともきっと会っているの>だろうと思います。記憶は残念ながらありません>が。



会ってみたいですね。そうそう、「河童のクゥと夏休み」というアニメ映画が評判がいいのです。見逃しているんですけど。



>彼らにとっては住み難い時代かも知れませんね。>せめて送信所のような歴史ある建物を残すくらい>は、できるといいですね。



そんな思いをこめました。

投稿: 久住浩 | 2007年10月15日 (月) 18時40分

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