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2008年9月30日 (火)

映画「トウキョウソナタ」★★★★1/2

最近では、ミニシアター系の作品が地元、千葉でも見られるようになった。今回は幕張シネプレックスのレイトショーで見た。入場料1200円、駐車代も3時間まで無料というのはうれしい。

黒沢清監督はホラーの名手としても知られる。最近では作品の幅も広がってきたが、本作は黒沢清監督の初のホームドラマという名前を借りたホラー(不安の物語)である。

主人公は健康メーカーのタニタ総務部で課長を務める佐々木竜平(香川照之)。総務局が中国にアウトソーシングとなり、リストラ。しかし、家族には言えず、毎日、スーツを着て、町をぶらつく。公園の食料配給に並んだり、図書館で時間を潰したりといった具合。

一方、妻の恵(小泉今日子)も不幸せというわけではないが、鬱屈した日々を送っている。大学生の長男、貴(小柳友)はチラシのビラを配ったり、やりきれない日々を送り、小6の次男、健二(井之脇海)はどこか浮いた存在で、学校給食費をくすねて、親に内緒でピアノを習っている。

それでも、夕食をともにする一家。しかし、ある時、長男は米軍が外国籍を受け入れるというニュースを聞き、入隊を志願。次第に不協和音が明らかになってくる…。

この映画はいろんな見方があるだろう。40男が見れば、香川に自身を投影するだろうし、妻は小泉今日子に自分の姿を重ねるだろう。若者なら、小柳に、子供なら、海君に重ねるかもしれない。彼らが抱えている秘密(=不安)は誰しもが持っているものだ。

40歳(まだ39だが)子持ちのサラリーマンである僕は当然のことながら、香川に自分を重ねた。

劇中の「トウキョウ」は東京ではない。あくまでもトウキョウだ。そんなに遠くではない東京のリアルな未来の姿と言える。

主人公は勤めていた健康機器メーカー、タニタ(これは実在する会社、僕も体重計を愛用しているだけにちょっとびっくり)をリストラされる。その理由は会社の中枢機能である総務局が中国にアウトソーシングされるというのだ。ただ、こんなことも起きるのではないか、と想像できるくらい日本の今の労働問題は深刻だ。

主人公はリストラされたことを家族には言えない。多分、僕も言えないんじゃないかと思う。

小泉今日子が出ていることで、同じく家族が秘密を抱えているとい話の「空中庭園」を連想するが、黒沢監督はそこから数歩進んで、家族と社会の問題として描く。ここが「20世紀少年」にはなかった部分で、さすがは黒沢清だ。

 

映画には目下、日本が直面している問題が鋭い示唆を持って描かれる。ワーキングプア、失業問題、リストラ、自衛隊派兵、自殺etc。

主人公は古い家長制度にこだわって、威厳を保とうとしているが、家族も本人もそれが崩壊していることを知っている。それでも、家族は食卓をともにする。それをやめてしまっては、本当に家族が崩壊することを知っているからだ。ただ、食卓は沈黙があり、それは嵐の前の静けさのようだ。そんな張り詰めた空気が、観客の不安を駆りたてる。家族は、危機を抜け出すことができるのだろうか?

しかし、その危機=(不安、恐怖)は誰しもが抱えているものでもある。ある者は一線を越え、死を選んだり、犯罪に走ってしまう。

ある夜、家族は決定的な危機を迎えてバラバラになる。その後、どうなるかは観客の楽しみのために取っておこう。ちょっとだけヒントになることを書いてしまうが、彼らの不協和音を救うのはソナタである。ソナタは室内楽曲。生活にはムダと言える芸術が彼らを救う。そこに、製作者の強い意志を感じる。

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受信: 2008年10月13日 (月) 11時28分

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