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2008年9月 7日 (日)

さや堂ホールをきっかけに~市指定文化財か国登録有形文化財か

6日に友人と出かけた千葉市の近代建築のひとつが、さや堂ホール(旧川崎銀行千葉支店)だ。

以下は反対の通りから撮影した全景だが、これを見ると、「え、どこが?」と思われるかもしれない。

あまりにも巨大な高層階の建物で、近代建築らしくないからだ。というのも、ここは古い建物の全体を、新しい建物で包み込むという「さや堂方式」で保存・再生されている。新しい建物部分には千葉市美術館、中央区役所が入っており、1階部分を見ると、ネオ・ルネッサンス様式のエントランスが見える。

千葉県産業科学館のホームページでは「全国的にも画期的な文化財的建造物の利活用法であり,各方面から注目されている。こうした近代洋風建築は,都市の中心部分にあってモニュメンタルな建物である。明治以来の急速な近代化のため,あまり町並みが調っていない千葉県内の都市にあって重要な建造物である」と説明されている。しかし、この「画期的な保存方式」には異論もある。

目下、保存か?建て替えか?で揺れている東京中央郵便局(吉田鉄郎設計)は「さや堂方式」ではないが、同じような考え方。ファザードだけを残して、地上38階の高層ビル化する計画(設計ヘルムート・ヤーン)だ。建築界、市民の側から「全体を残してこそ、保存。これは単なるアリバイ作り。意味がない」という反対の声が上がっているのだ。

東京中央郵便局の再整備計画について(pdf)

旧川崎銀行千葉支店は旧建物が大正12年の関東大震災で焼失。この反省をいかし、鉄筋コンクリート造り、耐火構造として昭和2年に建てられた。設計は矢部又吉。昭和20年7月7日未明、千葉市内の60%を焼き尽くした「七夕空襲」でも焼け残った貴重な近代遺産である。

吸収合併で三菱銀行千葉支店となり、昭和46年に千葉市が所有。中央区民センターとして、平成2年4月まで使われた。さや堂方式の千葉市美術館、中央区役所という複合施設として、平成6年に竣工。さや堂ホールは平成7年に千葉市指定文化財となった。建造物としての千葉市指定文化財は、これが最後となっている。


柱が印象的な内部

そもそも、千葉市指定の近代建造物は、この「さや堂ホール」と「旧生浜町役場庁舎」(平成6年指定)の2例しかない。市内最古の鉄筋コンクリート建築は大正7年竣工の神谷伝兵衛別荘だと思われるが、こちらは「国登録有形文化財」という扱いである。

千葉市指定と国登録。

一見、国の方が文化財のランクが上のように思えるが、そうではない。国の登録文化財制度は平成8年、指定制度を補完する形で作られた。保護対象は国や地方自治体が指定していない案件に限られる。そういった文化財を緩やかに保護しようという狙いである。

ここで検見川送信所をめぐる話をしたい。

送信所に関しては、日本建築家協会関東甲信越支部が7月に千葉市指定文化財にするよう要望書、陳情書を出している。家協会が国登録ではなく、市指定にしたところには深い意味がある、と捉えている。千葉市所有の建物であるから、千葉市できちんと保存してくださいよ、という意味だろう。

「千葉市指定文化財では利活用できない」から「国登録文化財とするほうがよい」という意見もあるようだが、それは誤りだと思う。

千葉市文化財保護条例を見ても、「指定文化財の保存に必要な措置を講ずることができる」とあるが、空調などの設備を入れるため、改造してはいけないし、施設として使ってはいけないとは書いていない。現に、さや堂ホールは利活用されている。

さらに、送信所を国登録文化財ではなく、千葉市指定文化財にすることは大きなメリットがあると思われる。千葉市は今年初めて地域文化財という画期的な制度を導入したばかり。対外的に、さらに「文化都市、千葉」をアピールできるはずだ。吉田鉄郎建築は評価が高まっている一方、東京中央郵便局、大阪中央郵便局は建て替えの危機にある。そんな中、千葉市だけが保存に踏み切ったら、どう評価されるだろうか?

もちろん、送信所は文化財指定がゴールではない。文化財として大切に保護をかけ、市民に還元するような活用ができればいいのである。

僕自身、千葉市指定か国登録か名前のこだわりはない。

大事なのは速やかに保護対策を進めることだと思う。緊急性は高い。表面は爆裂(表面の剥離)が見られ、その進行が早まっているように思える。


パラペット部分の爆裂

国登録有形文化財の場合、審査期間もあり、迅速というわけにはいかない。その点、千葉市指定文化財にする場合は、千葉市がその考えを固めれば、いますぐでも保存への道を探ることができる。

予算の関係上、本格的な修復は次の五ヵ年計画の中で進めるにしても、補正予算を組み、内部外部の調査を始め、崩落を食い止めることが必要ではないだろうか。せっかく、文化財としての保護することが決まっても、いざ保存をしようとする時に、「使い物にならなかった」では意味がない。

たとえば、ここに成田市の例がある。成田市は三里塚記念公園内に残る防空壕の調査を行うために、9月補正予算案に約107万円を組んだ。同防空壕は皇室用の防空壕と考えられており、「皇室用か否かを含め、保存、公開すべきものかを調べたい」としている。

市が防空壕調査へ
保存、公開の可能性探る 成田・三里塚記念公園内
(千葉日報記事)

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