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2008年11月16日 (日)

「アイス・ストーム(THE ICE STORM)」(アン・リー監督)★★★★

●「虚空」があっても、家族は家に帰ってくる

The Ice Storm (1997)

「いつか晴れた日」で世界進出した台湾の巨匠、アン・リー監督作。97年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞受賞。舞台は70年代のアメリカ。郊外に住む典型的な中流家庭に起こる親同士の不倫、その子供たちの無軌道な愛の姿を描く。主演:ケビン・クライン(デーブ)、シガニー・ウィーバー(エイリアン4)、クリスティーナ・リッチ(ベスト・フレンズ)、イライジャ・ウッド。監督:アン・リー。原作: リック・ムーディ。全米97年9月、foxサーチライト配給。113分。(ギャガ)

《「ファンタスティック・フォー」の73年11月発売、第141号で敵の手で人間原爆に変えられた息子を、主人公は反物質兵器で攻撃する。この作品らしい設定だ。彼らはただのヒーローではなく家族であり、パワーが強ければ強いほど互いを傷つける。それが「ファンタスティック・フォー」のテーマなのだ。家族は「反物質」なのだ。人間は家族という虚空から生じ、死ぬとき、「虚空」に戻る。これは逆説的だ。絆が強いほど、「虚空」は奥深い。》

前段は主人公一家の長男のモノローグ。電車で帰路につく彼はコミック「ファンタスティック・フォー」を読みながら、そんなことを思う。「ファンンタスティック・フォー」は米国で人気コミックのひとつだ。宇宙線の嵐の影響で超能力を得た主人公4人が人類のために活躍するという話。ゴムのように体を変形することのできる「ミスター・ファンタスティック」と透明になる能力を持つ「インビジブル・ガール」は夫婦で、炎人間の「ヒューマン・トーチ」は「インビジブル・ガール」の弟だ。(怪力の岩石男「ザ・シング」だけが”他人”)。

テーマを引用によって語るのは、よくある手だが、それがアメコミというのは恐れ入る。このワンシーンで70年代という時代背景、少年がいるのが典型的な中流家庭だということ一気に説明してしまう。このジェイムス・シェイマスはこの脚本で第50回カンヌ映画祭脚本賞を受賞。リック・ムーディの原作がある以上、正確には脚色賞なのだが、やはり、シェイマスの手腕によるところが大きいだろう。

その脚本はさまざなところで巧妙な伏線を張っている。アン・リー監督作の「推手」 (91)「恋人たちの食卓」 (94)の脚本家で、2人はこれまでの家族の温かさを描く作風から一変、家族の影を鋭く描き出した。

ベン(ケビン・クライン)の一家は一見、幸せそうに見える平凡な家族。だが、ベンは隣家の妻ジェイミー(シガニー・ウィーバー)と浮気。妻エレナ(ジョアン・アレン)は精神不安定。長女ウェンディ(クリスティナ・リッチ)は早熟で、政治やセックスが関心事。隣家の少年マイキー(イライジャ・ウッド)と森でキスをしたり、セックスの真似事をしたりする。崩壊の寸前のところで均衡を保っている。

ベン夫妻と隣家の夫婦は嵐の夜に行われたパーティーに出席。そこで、エレナはベンの浮気の決定的事実を知ってしまう。そして…、別の場所ではもうひとつの悲劇が起こっていた。

後半、ベンの一家はそれぞれの秘密を知ることになる。ウエンディは父の浮気を、ベンはウェンディの無軌道な性を。秘密を知ることによって、家族の「虚空」は広がっていく。しかし、最後は家族は家族の元へと帰ってくる。それが冒頭からラストへつながる長男の帰郷シーンの意味なのだろう。

家族は崩壊寸前ながらも、長男を迎えに行くために車で駅に向かう。誰もが黙っている。ベンは無事に帰ってきた長男の顔を見て、思わず顔を被い涙する。その後、家族は愛を取り戻したかどうかは分からないが、ベンの一家は家族の意味を確認したに違いない。重いラストに、誰もが自分の家族を振り返るだろう。(98年9月26日、銀座テアトル銀座)

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