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2009年1月30日 (金)

消える国登録文化財 歌舞伎座 新しい歌舞伎座の設計を手がけるのは「負ける建築」の隈研吾氏。「補強ができないくらい老朽化していて、全面的に建て替えざるを得ない」

東京中央郵便局に続き、東京の名所がまた消える。

送信者 東京

銀座の名所、歌舞伎座のリニューアル・パースが発表され、いよいよ取り壊されるのだ、という実感がわいてきた。寂しい。

銀座、築地周辺は東京でも好きな街だ。渋谷、新宿のような人混みはなく、ほどよく混んでいるという感じ。歌舞伎座を見ると、ほっとする。

出来上がったパースは現在の瓦と唐破風を残したという和風モダン、というイメージ。後ろには29階建てのオフィス棟がそびえる。一部ファザードを再現する東京中央郵便局のリニューアル案と同じような印象だ。

背後のオフィス棟は控えめなデザインにはするようだが、それでも、新歌舞伎座はより小さい印象を与えるだろう。高層ビルに囲まれ、ポツンと建っている札幌時計台のように、「ガッカリ名所」になりそう。

2008年12月16日 (火)
札幌時計台、がっかりの理由

歌舞伎好きに聞くと、歌舞伎座は音の響きがいいんだそうだ。それは意図して作られたのではなく、奇跡的な偶然らしい。それゆえ、歌舞伎役者もお気に入り。歌舞伎役者の中にも、この全面改築を惜しむ声があるようだが、松竹からお金をいただいている以上、「改築反対」と声を上げるわけにもいかない、ということだ。

歌舞伎座は、国の登録文化財。新聞などでは、「国の登録文化財に指定された」という記述をみるが、登録は登録であって、「指定」ではない。あくまでも、所有者が自主的に登録をするものである。よって、登録解除も所有者の都合によってできる。

登録文化財は指定文化財制度を補完する形で96年に生まれた。これはこれで、ある程度、文化財を守ることに効力を発揮した反面、所有者がいいように運用できてしまうという事情もある。

今までは、「文化財だ」といい、多少なりとも国から金銭的な援助を受けていたのに、老朽化を理由に壊すことも自由というのは、どこか、おかしくないだろうか? 老朽や耐震性だって、今の技術を持ってすれば、十分補強可能だというのに。

新しい歌舞伎座の設計を担当する隈研吾氏によると、「構造的に補強ができないくらい老朽化していて、全面的に建て替えざるを得ない」(2010年2月6日、朝日新聞でのインタビュー)そうだ。

2008年11月 6日 (木)
「負ける」建築~隈研吾

2008年12月 1日 (月)
「負ける建築」★★★

もちろん、建物は所有者のものである。今回は特に民間企業の所有物である。だから、それをどうしようと自由だ、という論理もある。しかし、歌舞伎座は、人々に愛され、街の風景の一部となっている。その公的な役割も大きい、ということは忘れてはいけないだろう。

僕ら「検見川送信所を知る会」が保存、利活用して欲しいと提言している検見川送信所も、所有者である千葉市では「国登録文化財が妥当」と言っている。しかし、国登録でしっかりと保存、利活用がかなうのだろうか?<※2010年4月、検見川送信所は保存活用に向けた調査をするために調査費が組まれた。これは失われつつある近代建築でも快挙といっていい>

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コメント

詳細な論旨をありがとうございます。
「わが意を得たり」の気持ちです。

>歌舞伎座は、人々に愛され、街の風景の一部となっている。その公的な役割も大きい…

まさにそうだと思います。
人々が日々健康的に暮らしていく中で、「調和」というものは欠かせないと思うんです。

少しケースは違いますが、
漫画家の楳図かずお氏邸の壁の色について、
裁判所は原告の訴えを棄却しました。
深く追いかけていないので批評できる立場ではありませんが、
僕は何となく原告の主張が分かる気もしました。

歌舞伎座の場合も風景・環境といった「調和」に配慮が足らない、
建物所有者をしてそんな意識がまったくなく、
「高層ビルを建ててテナントを募る」という単なる経済的原則のみに立った施策を、将来禍根に残すことのないよう祈るばかりです。

投稿: まさやん | 2009年1月30日 (金) 12時00分

まさやんさん

>詳細な論旨をありがとうございます。
>「わが意を得たり」の気持ちです。

まさやんさんのブログ記事で十分、伝わっていたのですが、ちょっと便乗してしまいました。

>まさにそうだと思います。
>人々が日々健康的に暮らしていく中で、
>「調和」というものは欠かせないと思うんで
>す。

個々の存在を大事にしながらも、同時に調和を目指す。これって、両立できるものだと思います。

>少しケースは違いますが、
>漫画家の楳図かずお氏邸の壁の色について、
>裁判所は原告の訴えを棄却しました。
>深く追いかけていないので批評できる立場で
>はありませんが、
>僕は何となく原告の主張が分かる気もしま
>した。

楳図かずお氏のケースは論評が難しいですね。
どちらも分かる気がします。
ただ、両者ともに裁判を起こさなくても、話し合いなどで歩み寄ることはできたのでは、との感想を持ちます。
そういう意味では、調和が足りなかったということでしょうか。

>歌舞伎座の場合も風景・環境といった「調
>和」に配慮が足らない、
>建物所有者をしてそんな意識がまったくな
>く、「高層ビルを建ててテナントを募る」と
>いう単なる経済的原則のみに立った施策を、
>将来禍根に残すことのないよう祈るばかり
>です。

経済面を優先する「街づくり」「建築」は今の時代には合っていないような気がします。今回の不況も、不健全な経済政策が大きな一因だと考えています。やはり、内実が伴わないものはうまくいきませんよね。

投稿: 久住コウ | 2009年1月30日 (金) 19時35分

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