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2009年3月30日 (月)

東京中央郵便局シンポジウムで考えたこと

仕事で大阪に来ています。少しまとまった時間があったので、22日、田町の建築会館で開催された東京中央郵便局をめぐるシンポジウムを自分なりに整理して報告したいと思います。

歴史的な公共建築の保存問題は行き着くところ、政治問題になっていくのだとは思う。とは言え、建物の保存うんぬんが政治の道具のように見えてしまったのは、市民の側にとっても、政治家側にとっても不幸であった。

東京中央郵便局はあまりに多くの問題を抱えており、焦点が分かりにくくなっていた。ところが、鳩山総務大臣の「国辱もの」「トキを焼き鳥にするようなもの」といった発言で一躍注目を集め、「かんぽの宿」同様、「鳩山大臣対日本郵政」という図式で語られることになった。安易な図式ではあったが、これが一番分かりやすかったのだろう。

ただ、「かんぽの宿」と決定的に違ったのは、「解体工事が進んでいるのに、何をいまさら」という声と「民間企業に政界が介入するのはおかしい」という声が上がったことである。

この日本郵政が民間会社であり、介入するのはおかしいという論は異を唱えたい。

というのは、同じ論理で、「かんぽの宿」の売却問題を、民間の勝手と言えるだろうか?

これは否だろう。

日本郵政は民間企業とはいえ、その株主は日本政府であり、とどのつまり、株主は国民ということだ。その財産処分に関しては、適切に行われなければならないのは当然だ。何の関わりのない民間企業に文句を言うのとはわけが違う。

「かんぽの宿」と同様に、東京中央郵便局は国民の財産である。高層ビルにした方が儲かるからと言って、安易に解体、建て替えするのはおかしい。しかも、建築家によれば、高層化しなくても、その分の権利を転売などで損をしない仕組みもある。そういったことは検討されなかったのか?

「いまさら論」への声が大きくなったのは、金が原因だ。

郵政側は「工期を遅らせば、億単位の金がかかる」「買い取ってくれるなら、話は別」といった。これに、経済界、経済系のメディア、論客が味方になった。報道は論点すりかえもいいところで、根本的な問題は語らず、鳩山大臣のパフォーマンスであるかのように報じた。これに、一部のテレビコメンテーターも乗った。

全体像を報じないメディアの姿勢にも問題もあるが、国民の側にもリテラシーが求められている。

昨今、世論の動きをみていると、一極集中の傾向が強い。反対、少数派の意見はかき消されてしまう。そこにはほとんど疑念すら見られない。これは非常に危険なことではないか。

数年前、イラク人質問題が起こった時には自己責任論が巻き起こった。確かに、彼らは危険を承知で戦地に赴いた。しかし、人道的支援に出掛けた者を単に自己責任と断じ、彼らのプライバシーを暴く権利が誰にあるのだろうか? 日本人はいつからそんな悲しい人間になってしまったのか?

同じようなことが郵政解散でもいえる。どれだけの人間が真剣に考えただろうか? 小泉首相のキャッチーなフレーズにつられ、民営化、規制緩和賛成とはならなかったか?

年越し派遣村など派遣法も大きな問題になっているが、これも小泉政権での話である。小泉が目指した政策はアメリカを真似した「新自由主義」は、つまりはこういうことであった。これについてはしっかりとした検証が必要だ。

「いまさら論」「政治パフォーマンス」という意見の方には、「東京中央郵便局を重文にする会」の方が話された、こんなエピソードを紹介したい。鳩山大臣は解体された建物を見て、涙を流した、という(もちろん、嘘泣きだってあるかもしれない)。

鳩山大臣を文化財保存の英雄だとまでは言うつもりはない。ただ、保存部分が拡大したのは、鳩山大臣の存在が大きい。建築家の意見も、市民団体も、残念ながら無力だった。これも原因は分かっているが、機会があれば、言及したい。

鳩山氏は昨年9月に総務大臣に就任した。だから、6月に起こった保存論議を知らないでは済まされない。せめて就任直後に声を上げてくれればという感情はあるかもしれない。

しかし、振り返ってみていただきたい。昨年6月から政界で何が起こったかを。自民は総裁選でガタガタ。文化財保存なんて争点になるはずもなかった。

「いまさら論」をめぐっては、責めるべきは日本郵政だ。

重文にする会の資料によると、日本郵政は建て替え前に専門家による歴史検討委員会を設置したが、昨年6月の報告書提出後、すぐに建て替えの請け負い先の入札を行っている。歴史検討委員会の意見はほぼ全員が全面保存を主張していた。また、文化庁も、重要な文化財であるとして、計画の再考を促してきた。この声はどこに消えたのか?

また、工事を請け負った大成建設は実は郵政省時代にも建物の内部調査を請け負っていたという事実も見逃せない。これは奇妙な一致というだけだろうか? 細部を詰めていくと、いろんな疑念が出てくる。 だが、政治決着をもって、うやむやになってしまったのは残念でならない。

ただ、ここにはいくつかの大きな教訓があった。

まず第一に、壊されたらおしまいだということ。

第二に、建物の保存問題を政争の具にしてはいけない、ということ。

第三に、政治家には早めに重要性を理解してもらっておくこと。

ある政治家と話した時、「文化財は有権者の受けが悪いんですよ」と言われた。そりゃ、そうかもしれないなぁ、とも思った。文化財をどうにかしても、利便性がよくなるわけではない。

ただ、星の王子様が言うように「大切なものは目に見えない」のではないか。

東京駅の保存に東京芸大の前野まさる教授は「保存運動は心は清く腹は黒く」と話された。つまり、戦略を持て、ということだと思う。身にしみる言葉であった。

シンポジウムにも出席した五十嵐敬喜法大教授が見た東京中央郵便局問題の真相

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コメント

鳩山さんの政治パフォーマンスといった感じもしなくもないですが、結果としてスポットライトが当たったことは良かったですね。

>「文化財は有権者の受けが悪いんですよ」・・・

こういう台詞を聞くと“政治屋”という商売人なのかな?と感じてしまいますね。信念を持った人に賛同して投票するような政治だったら投票率も上がるように思うんですけどねぇ・・・

千葉県は森田知事になったようですね。どんな信念をお持ちなんでしょうか?楽しみです♪

投稿: しぇるぽ | 2009年3月31日 (火) 12時42分

しぇるぽさん

ご無沙汰しています。

>鳩山さんの政治パフォーマンスといった感じもしな
>くもないですが、結果としてスポットライトが当た
>ったことは良かったですね。

そうですね。こんなことでもなければ、スポットライトが浴びることがない。これが日本人の文化意識なんでしょうかね。寂しい限りです。

>>「文化財は有権者の受けが悪いんですよ」・・・

>こういう台詞を聞くと“政治屋”という商売人なの
>かな?と感じてしまいますね。信念を持った人に賛
>同して投票するような政治だったら投票率も上がる
>ように思うんですけどねぇ・・・

この発言をされた方は政治屋タイプではないのですが、ね。そういう土壌を作ってしまった市民の側にも問題があるのでしょうね。

>千葉県は森田知事になったようですね。どんな信念
>をお持ちなんでしょうか?楽しみです♪

森田知事の手腕が未知数ではあり、よいか悪いかはこれからの議論でしょうが、選挙が知名度勝負でマニフェスト論争にならなかったことが残念でなりません。投票率も、少し上がったとはいえ、半数以下。千葉県民は政治意識、文化意識が低いのでしょうかね。

投稿: 久住コウ | 2009年4月 3日 (金) 07時40分

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