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2009年6月25日 (木)

「1Q84」(村上春樹)★★★★★ 映像化はデビッド・リンチでぜひ

今、電車の中で単行本を読んでいる人を見たら、「1Q84」だと思え、と言われるくらい売れまくっているんだそうです。
確かに、重版が書店に入荷されたと思ったら、即完売。僕が購入した書店のベストセラー・コーナーも、入荷待ちの張り紙に変わっていました。

久々の村上春樹作品だから、売れるのだろうと思っていましたが、さすがにこれほどとは思いませんでした。僕は発売から2週間を経て、入手。1、2巻併せて、1週間程度で読み切りました。

 読み出すと、止まりません。村上氏はインタビューで「混沌とした時代こそ、強い物語が必要だ」と語っていましたが、それは作品の自信の現れだったのでしょう。7年ぶりに書き下ろされ、2年を要したという同作品は、読者をつかんで離しません。「ノルウェイの森」だけ読んで、がっかりした人もいるかと思いますが、あまり村上作品には触れたことがない人も、手にとっても損はない。

物語は殺し屋の女性、青豆がカルト教団の教祖を暗殺する話と、作家志望の塾講師、天吾が、女子高生ふかえりの小説「空気さなぎ」をリライトする話という2つのエピソードが交互に描かれ、最後はひとつに結びつくという構成。この構成は既に「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」でやっていますが、物語中に小説「空気さなぎ」を入れこんで、面白く見せてくれます。

「海辺のカフカ」は主人公、カフカ少年の造形に「ウソ」を感じてしまい、乗り切れなかった部分が多分にあったのですが、本作は29歳の男女が主人公ということで、村上氏の得意な年齢世代。登場人物の造り込みは、より丁寧な印象です。

他者とは積極的に交わらず、小説は朝書き、基本的には規則正しいという天吾のライフスタイルは、村上氏そのまま。青年期の村上氏は、こんな感じだったのでは? とファンをニンマリさせます。

「ザ・ローリング・ストーンズ」のミック・ジャガーは、あなたのベストアルバムは聞かれ、「最新作」と答えてきましたが、この「1Q84」は、これまでの村上作品の集大成といえる仕上がりではないでしょうか。

 オウム事件を取材したノンフィクション「アンダーグラウンド」は村上春樹的な小説を求めていた一部のファンからは、作家がなぜ裁判傍聴したり、取材をするのか? という疑問の声があげましたが、同作では、そこでの経験も見事にフィードバックされています。(ちなみに、「アンダーグラウンド」は村上氏の代表作のひとつに入ると思っています)

 僕はiPodで小説に出てくるヤナーチェクの「シンフォニエッタ」を聞きながら、映像を思い浮かべながら、読み進めていったのですが、「1Q84」を映画化するなら、ぜひ、監督はデビッド・リンチにお願いしたい。得体のしれぬ「リトル・ピープル」、死んだ山羊の口に現れる”出入り口”「空気さなぎ」、2つの月、倒錯的なセックス。どれをとっても、リンチ的な世界のように思えます。「マルホランド・ドライブ」のような訳の分からない世界を映像で見てみたい、と夢想してしまった。

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