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2009年6月 4日 (木)

「21世紀の歴史」(ジャック・アタリ)★★★★

著者のジャック・アタリはフランス政府、サルコジ政権下でフランス経済の立て直しを提言する「アタリ委員会」の中心人物。

地球の歴史を俯瞰しながら、21世紀の今後を語ります。アタリが最初に描き出す未来像は、「ノストラダムスの大予言」を思わせるような暗い社会です。貧富の差は拡大し、戦争の危機に脅かされる。日本も、その例外ではありません。以下、抜粋です。

日本は世界でも有数の経済力を維持し続けるが、人口の高齢化に歯止めがかからず、国の相対的価値は低下し続ける。1000万人以上の移民を受け入れるか、出生率を再び上昇させなければ、既に減少し続ける。日本がロボットやナノテクノロジーをはじめとする将来的なテクノロジーに関して抜きん出ているとしても、個人の自由を日本の主要な価値観にすることはできないだろう。また、日本を取り巻く環境は、ますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大などである。

こうした状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍備を増強させながら、必ず軍事的な解決に頼るようになる。こうした戦略は多大なコストがかかる。2025年、日本の経済力は、世界第五位ですらないかもしれない。

序文にかえての部分では、日本はいまだに中心都市となりえていないと指摘しています。

理由は3つ。

1)既得権を守ってきた。
2)海を掌握しなかった
3)クリエイター階級を育てなかったこと

アタリは時間の価値が上昇するが、飛行機による移動は、環境破壊が問題になり、金持ちの贅沢になっていくとも書いています。

こうした最悪のシナリオを提示した上で「超民主主義」なる概念を紹介していきます。

そのキーワードになるのが、アタリが「トランスヒューマン」と呼ぶ人々の存在です。トランスヒューマンは収益を最終目的としない愛他主義者であり、世界市民と定義しています。トランスヒューマンは新しい機構、制度を生み、新秩序を作る。調和主義の人々、企業の存在が次世代を担うとしています。

同書は2006年11月に発刊されました。その後の社会を見ると、アタリが示した最悪のシナリオへと向かっているように思えます。

世界不況により、企業体力の弱いところから、倒産が続いています。弁護士の方からお話を伺うと、この不況で裁判案件は減ったそうです。つまり、裁判を闘う財力もなく、泣き寝入りする人々が増えているというわけです。
失業率は高くなり、企業はますます内部留保の傾向を高め、経済は沈滞化。社会貢献への関心は低くなっています。軍事面では、アタリの指摘のように、北朝鮮の核配備は着実に進んでいますから、日本も自衛を高めざるを得なくなるでしょう。

どういう世界にしていくのか、したいのかは僕たち一人一人が考えていかなければ、いけませんね。

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