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2010年1月30日 (土)

「雇用危機をどう乗り切るか」(中野雅至)★★★★

「100年に1度」の不況。そんな中、雇用不安を抱えている人は多いのではないか。

賃金は下がり、労働条件も悪化している。ローンを抱え、その返済にも四苦八苦。ついに我が家も手放した、という話は珍しくない。不況は相変わらずで、派遣切りから始まった雇用調整(クビ切り)は正社員にも及んでいる。

著者は厚生労働省の元キャリア官僚の中野雅至氏。5年先の雇用情勢を描きながら、個人が、国がどうすればよいかを提言する。

雇用危機の原因は、日本独自の終身雇用制度を解体させながらも、その見合うセーフティネットを作らなかったことに尽きる。著者も同様の指摘をしている。

2010年4月には労基法が改正され、残業時間の割増分が増額になる。

同書には詳しく触れていないが、変更点は以下の通り。

(1)残業代割増賃金率の引き上げ
時間外60時間を超える場合には50以上の割増賃金を支払う(現行50%)
(2)特別条項付き協定と時間外労働削減の努力義務
36協定を締結して労基署に届出することによって、限度時間を超えて勤務する時間について、割増率を25%を超える率とするよう努力すること
(3)有給休暇の時間単位取得
年次有給休暇を時間単位で取得することができる。その要件として労使協定の締結や日数は年5日間にすること、時間単位で取得することを希望していることが要件。

これらの法規制が強まることで、労基署は企業の不正なサービス残業や不当解雇に対して取締を強化することが考えられるという。一方、正社員の賃金のあり方が議論されるだろうと見る。「同一労働同一賃金の原則」に従い、正社員の賃金をカットし、非正規社員に配分するという企業が増えるだろうとも予測する。

「考え方」としては正しいし、支持する。例としては、正社員を賃金カットし、非正規社員の正社員化を行った広島電鉄が上げられている。しかし、正社員の賃金カットが行われている中で、この下がった賃金を、さらに非正規社員に配分しようというのは、正社員の理解を得にくいだろう。著者も「給料の大幅なカット受け入れられることのできる正社員などどれだけ存在するだろうか」と書いている。

連合も2010年春闘から、本格的に非正規社員の問題を取り組むとしているが、非正規ユニオン関係者の声は懐疑的だ。

同書は、最後、政策について言及する。雇用の自由化とともにセーフティネットを備えているデンマークの労働政策が日本に合っているのではないか、と提言する。

鳩山由紀夫首相は1月29日の施政方針演説で、「命を守りたい」と切り出し、「命」という言葉を24回も使った。雇用の確保は緊急課題としたが、具体策は示されなかった。

無駄な公共事情の仕分けも大事かもしれないが、公共事業は民間を元気にする側面もある。仕分け事業ばかりで、具体的な成長戦略がないと、デフレからの脱出はない。雇用危機はまさにまったなしだ。


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書評 ブックレビュー」カテゴリの記事

コメント

なかなか難しい局面だとは思うのだけど、色んなしがらみを壊して欲しくて、僕は民主党に一票を入れました。
でもなかなか壊せませんね。

個人的には、変えるためにはムチばかりでアメも与えないと。と思うんです。逆も然り。
雇用の課題を企業に求めるならば、法人税を安くするとか。
一方で労働者側もアメをくれ、と言うだけでは国が滅びます。ムチは何でしょうね?消費税アップかな?
小沢さんの問題なんか少し置いておいて、こっちを先に解決すべきでしょうね。

僕の会社では、昨年から残業規制がかかっています。
なぜか?社員=コストだからです。
だから効率を求められます。
一方で、社員は残業すると給料が上がるため、生活に困ります。
効率が下がると残業が増えて給料が上がる。
そもそもこういう仕組みもおかしい。
こういったところも改革が必要なんでしょうね。

もちろんサービス残業を命ずる会社は厳罰に処分されるべきなのですが。

投稿: rikoaiぱぱ | 2010年1月31日 (日) 00時04分

僕は是々非々の無党派だと自認していますが、今回は民主党に投じました。期待感が大きかったせいか、いろいろと不満を感じています。

自民党のしがらみは壊れたけれど、別のしがらみが生まれた。そんな感じでしょうか。

その不満の最たるものは経済政策といって過言ではありません。もちろん、仕分けといった無駄をなくすことは重要なのですが、デフレ状態で緊縮財政を敷いたら、悪化するのは当然です。

無駄を省きながら、一方、雇用を創出する。そんな政策を求めていました。しかし、現実は違いましたね。

>小沢さんの問題なんか少し置いておいて、こっちを
>先に解決すべきでしょうね。

おっしゃる通り、小沢問題はいわば、政権VS官僚。あるいは政権VS大手マスコミの主権争いみたいなもの。どっちもどっちみたいな側面があります。タイミングが悪すぎですね。

>効率が下がると残業が増えて給料が上がる。
>そもそもこういう仕組みもおかしい。
>こういったところも改革が必要なんでしょうね。

まさに前記事で紹介した「働き方革命」での話ですね。
コストをどう見るか、という問題です。
思うに、労働と言うのは量と質をきちんと見極めなければいけない。それには効果測定が必ず必要なはずです。
日本では、その辺があいまいなのではないか、と思います。
この辺は使用者側と労働者側がうまく妥協点を見つけていくしかないのでしょう。

>もちろんサービス残業を命ずる会社は厳罰に処分さ
>れるべきなのですが。

これは労基法違反です。ただ、会社がペナルティを食らうと、その反動を食らうのは労働側でもあるのです。
国際タクシーの超過勤務問題などはいい例でしょう。


投稿: kuzumik | 2010年2月 1日 (月) 03時40分

労働の対価として賃金を得ているという当たり前のことを、私たち正社員ももっと感じるべきだと常々思っています。

仕事の成果を定量化できるようなインフラを整備し、これだけの成果だからこれだけ貰える・・・というような仕組みになれば、同一労働同一賃金の原則も、より明確に感じられるようになるのではないでしょうか?

もちろん、最低限の生活を保障する必要はあるでしょうけれど、正社員や役職といった地位だけで、成果が無くても貰えてしまうという今の賃金体系では、いずれ社会は崩壊してしまうと思います。

このような制度になれば、私個人は頂けるサラリーは上がると思っています(笑)

休暇も当社の場合先ずは完全取得からですかねぇ?3月には形骸化してしまっている制度を使って、3連休を子供の春休みに併せて採るつもりです♪

投稿: しぇるぽ | 2010年2月 9日 (火) 12時33分

しぇるぽさん

>労働の対価として賃金を得ているという当たり前の
>ことを、私たち正社員ももっと感じるべきだと常
>々思っています。

意外と意識が低いですよね。

>仕事の成果を定量化できるようなインフラを整備
>し、これだけの成果だからこれだけ貰える・・・と
>いうような仕組みになれば、同一労働同一賃金の原
>則も、より明確に感じられるようになるのではない
>でしょうか?

>もちろん、最低限の生活を保障する必要はあるでし
>ょうけれど、正社員や役職といった地位だけで、成
>果が無くても貰えてしまうという今の賃金体系で
>は、いずれ社会は崩壊してしまうと思います。

労働は時間と質を考えなければいけないでしょう。しぇるぽさんがおっしゃっているのは、成果主義の考え方ですね。管理職以上は成果主義で構わないと思います。つまり、裁量が任されているから。

>このような制度になれば、私個人は頂けるサラリー
>は上がると思っています(笑)

賃金の分配は難しいのですが、最低賃金を保証して、プラス評価で上乗せしていく賃金体系なら、やる気のある社員のモチベーションがあがるでしょうね。

>休暇も当社の場合先ずは完全取得からですかねぇ?
>3月には形骸化してしまっている制度を使って、3
>連休を子供の春休みに併せて採るつもりです♪

いいなぁ、休みたい。有給を消化していないというのは、完全に未払い賃金ですよね。

投稿: kuzumik | 2010年2月 9日 (火) 21時37分

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