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2010年2月11日 (木)

「小が大に勝つ 兵法の実践」(中條高徳)★★★★

先日、ある会議が行われた九段会館でのこと。懇親会を抜け出し、喫煙コーナーで、一人で一服していたら、ある老人から「君、一人でいないで、こっちに来なさいよ。これも縁だからね」と言って声をかけられた。それが「小が大に勝つ 兵法の実践」の著者、中條高徳さんだった。

名刺の裏書きを見ると、立派な肩書きがズラリ。しかし、それと反して、気さくなお人柄に感銘を受け、アマゾンで著書を手にした、というわけだ。

中條さんはアサヒビールの再生に成功した人物。一貫して、「ビールは生が正しい」とミニ樽ブームに火をつけ、「スーパードライ」の生みの親としてドライ戦争の第一線で指揮した。


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昭和61年、アサヒビールは戦いに疲れ果てた集団だった、という。キリンのシェアは60%と、その背中を見ることさえ困難だったという。再建計画の指揮にあたった中條さんが手本としたのが兵法だった。

中條さんは兵法だけでなく、いろんな経営者を独自に研究されているようだ。日本の経営者で経営理念を重要視してきたのは松下幸之助だという。

「私は60年にわたって、事業経営に携わってきた。そして、その体験を通じて感じるのは経営理念というものの大切さである。いいかえれば、この会社は何のために存在しているのか。この経営をどういう目的で、またどのようなやりかたで行っていくのか、という点について、しっかりとした基本的な考え方を持つことである」(松下幸之助「実践経営哲学」より)

士気を高めるには、大声だという。理屈がいい。声を出すのに金はかからない。

「声を大きくすることは単純で素朴な行為であるが、組織行動にはきわめて大きな効果を発揮する。自らのフラストレーションの解消に役立ち、相手を圧倒し、内なる勢いを増す。どんな不況になっても、コストはまったくかからない。スポーツでも激しい戦闘でも、攻め込むときは必ず大きな声をだし、自分を励まし、仲間の心を引き立てるのが常道である」

雑談で少し伺ったのだが、中條さんは九段会館近くに事務所を構えている。それは靖国神社を参拝するためだという。中條さんは終戦を陸軍士官学校で迎えた。士官学校の生徒であることは家門の誇りであったが、一変して、世間の目は国賊といわんばかりの冷たい視線に変わったという。

「志立たざれば、舵なき舟、くつわなき馬のごとし」との心境だった、と書く。
しかし、若き日の挫折が後に力になったようだ。

若さについて、以下のように書かれている。

「若さとは国の宝であり、会社の宝である」。

確かに、その通りだ。しかし、今の企業の多くは若者を活かしきっていない。

同書は96年発行だが、「自民党の瓦解は、この若さの喪失にあった」と指摘している。

「冷戦構造の解消と同時に、自民党の存在理由が著しく希薄になったことを党自身が気がつかねばならなかった。長期支配の翳りが体質疲労となり、『心の若さ』を失ってしまったのである。いまは凄まじい変化の時代である。変化への対応をお怠れば、必ず滅びる。他人事ではない。常にこんな危険が迫っているのである」

いまや、自民党だけではない。いくつか思い当たる業種もある。

では、強い集団になるのはどうしたら、よいか?

以下は「エクセレント・カンパニー」の著者が米国の超優良企業を対象にしたレポートから。

「自社の価値体系を確立せよ。自社の経営理念を確立せよ。働く人の誰もが仕事に誇りを持つようにするためには何をしているのかと自問せよ。10年、20年さきになって振り返ったとき、満足感をもって思い出せることをしているかを自問せよ」

やはり、何はなくとも理念なのだ。

そして、勝つ条件として、孫子の言葉を引用する。

「孫子は戦いに勝つか否かは、勝ちを信ずるかどうかにかかっている、と教えている。まず、勝つ体制をつくり、そのうえで絶対勝つという信念を持つ」

ところで、最近、飲料メーカー第1位のキリンとオーナー会社のサントリーの経営統合が物別れに終わった。原因は統合比率の不一致。資本力はサントリー1:サントリー0・5程度のようだが、サントリー側は対等統合を望み、断念せざるを得なかったという。両社は巨大化する諸外国の飲料メーカーに対抗しようと利害が一致。中国などでの海外市場の拡大を狙ったわけだが、これによって、経営戦略の修正を迫られた、といった論調で報じられている。
 
キリンは上場企業、一方、サントリーは創業者が株主を持つオーナー会社。企業体質の違いを乗り越えることができなかった、というわけだ。今後、どのような影響が出てくるのか。一層注目が集まることだろう。

いま、あらゆる産業で統廃合が進み、産業構造は大きく変化している。各社とも生き残りに必死だが、そのヒントは歴史の中にある。

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