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2010年4月19日 (月)

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」★★★★ 発想の妙とパッケージの勝利 #moshidora

新刊ラジオ @sinkanjp というPodcastを愛聴している。ビジネス書を中心に新刊書を紹介するというもの。「耳で立ち読み」というのがキャッチフレーズ。徒歩移動の際に聴くのにうってつけなのだ。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」はそこで紹介された一冊だ。

スタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』よりは短いけど、正式題名が未だに覚えられない。通称「もしドラ」と呼ばれている。

高校野球部の女子マネジャーが、マネジャーとしての勉強をしたいと思い、書店で店員に勧められるがままにピーター・F・ドラッカーの「マネジメント」を購入し、同書を参考書に甲子園を目指す、というストーリー。

書店の売上上位にランクイン。「週刊ダイヤモンド」(4/17)によれば、既に38万部以上を売り上げているという。アニメオタクの人が好みそうなライトノベルな表紙に抵抗感がある、という人もいるだろうが、この表紙こそが普段はビジネス書を手にしない読者層まで広げた。物語は発想の妙であり、パッケージの勝利だといっていい。

かくいう僕も、あの表紙は恥ずかしかったけど、ブックカバーをかぶせてしまえば、関係がない。その点は出版社側が戦略的に作られているように思える。

時間にして約2時間半、あっという間に読み切ってしまった。読みやすく、面白い。最後の方は涙を拭いながら読むことになる、とは。経営とは感動なのだ、と気付かされる。

ストーリーはいきなり本筋から入る。読者は題名にひかれて買っているわけで、青春学園ドラマを延々やれても、飽きてしまう。

高校野球部の女子マネジャーがドラッカーを読みながら、マネジメントについて考えているという光景も、想像するだけでいじらしいし、面白い。

ドラッカーの著書は企業人を想定して書かれたものだが、個人の生き方にも通じるとして広く読まれている。しかし、その思想、言葉が非営利団体である高校野球部に通用するのか? ドラッカーは「マネジメント」の冒頭で、「顧客は誰かの問いこそ、個々の企業の使命を定義する上で最も重要な問題」と書いている。

ヒロインは、「高校野球部の顧客とは誰か?」を真剣に考える。そもそも、企業でもない高校野球部に顧客がいるのか?おそらく、作者も一番、悩んだのではないか?数あるドラッカーの名言の中でも「顧客」の定義こそ難しく、大切だということが気付かされる。

展開のテンポはよくて、グイグイ引き込まれる。肝心の野球部員の書き込みは足りない気もするが、読者もそんなに知りたいとも思わないのかも。最後の展開の予測はつくが、発想が変化球だけに、見事に直球を投げ込まれた感じだ。

作者、岩崎夏海さんは1968年生まれ。AKB48の企画などに携わっていたそうで、主人公のモデルはメンバー、「峰岸みなみ」という。野球部員はややおざなりだが、ヒロインがイキイキと描かれているのはそういうことか。

高校野球部に「マネジメント」が使えるということは、なんでも応用できるってこと。「もしドラ」の「高校野球の女子マネージャー」の部分はいろんな誰かに当てはめて考えられそうだ。

今度は本家ドラッカーを読もうってと思う一冊だ。

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書評 ブックレビュー」カテゴリの記事

コメント

昨日買って、早速今日の帰途中に読んでみた。
野球もドラッカーもよく知らないんで、どっちかというとラノベ気分で読んでみたので、かなりの違和感は拭えない。やっぱり企画ありきなのかなってついつい思ってしまう(といいつつ、2箇所ほどグッときてしまったのだが...)。
逆にドラッカーの部分は結構面白く読めた。やっぱりよくわからないためか、結構斜め読みな気がしなくもない。ただ、改めて自分の仕事に当てはめたときに「顧客」ってなんなんだろうなって考えるのは良かったかなぁーって思ってみた。

投稿: ashes | 2010年4月20日 (火) 22時22分

ashes さんへ

>昨日買って、早速今日の帰途中に読んでみた。

早いね。

>野球もドラッカーもよく知らないんで、どっちかというとラノベ気
>分で読んでみたので、かなりの違和感は拭えない。やっぱり企画あ
>りきなのかなってついつい思ってしまう(といいつつ、2箇所ほどグ
>ッときてしまったのだが...)。

ラノベ気分で読むと、油断してしまうところがあるんだろうね。というか、僕はラノベ自体をよく知らないけどさ。

>逆にドラッカーの部分は結構面白く読めた。やっぱりよくわからな
>いためか、結構斜め読みな気がしなくもない。ただ、改めて自分の
>仕事に当てはめたときに「顧客」ってなんなんだろうなって考える
>のは良かったかなぁーって思ってみた。

ドラッカーの基本的な部分は抑えているように思える。ただ、僕もドラッカー自身の著作はほとんど読んでいないが、経営や仕事術の本には必ず書いてあるので、そうかなと思う程度。

結果的にいうと、それなりに楽しめて読めたってことだよね?

投稿: 久住コウ | 2010年4月21日 (水) 09時49分

読むとやっぱり、どーしても企画ありきっていう感じが拭えなかったり、主人公の造形とか、展開のご都合主義っていうか、ツッコミは色々あるけど、さらりと読めて、それなりに楽しめて読めたよ。
あと、今フッと思ったのだけど、この本を出すにわたって、どのようにマネージメントあるいはマーケティングをしたのかなってちょっと興味あるかな。ww

投稿: ashes | 2010年4月21日 (水) 16時39分

ashesさん

>読むとやっぱり、どーしても企画ありきっていう感じが拭えなかっ
>たり、主人公の造形とか、展開のご都合主義っていうか、ツッコミ
>は色々あるけど、さらりと読めて、それなりに楽しめて読めたよ。

まあ、そういうツッコミはあるだろうね。僕も文学として優れているとかいう気はないもんな。しかし、楽しめて読めるってのは大事ではないかと思うわけ。

>あと、今フッと思ったのだけど、この本を出すにわたって、どのよ
>うにマネージメントあるいはマーケティングをしたのかなってちょ
>っと興味あるかな。ww

岩崎氏は週刊ダイヤモンドでの峯岸みなみとの対談の中で、「峯岸みなみという実在のマネージャーをスケッチしたにすぎない」と語っているが、編集側の話はあまり書いていないね。

投稿: 久住コウ | 2010年4月22日 (木) 09時09分

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