映画

2010年1月24日 (日)

クリント・イーストウッド監督「インビクタス 負けざる者たち」★★★★★

ネルソン・マンデラ大統領の目線から、95年、南アのラクビーW杯の奇跡の勝利を描く実話。信念とは何か、混迷の時代にリーダーは何をなすべきなのか? 違い(映画では白人と黒人)を乗り越えるためには? など深く考えさせ、最後には大きな希望を与えてくれる。

この素材自体は、「スポーツ映画」で終わるかもしれないが、イーストウッドは「社会派スポーツ映画」という新ジャンルにしてしまった。09年に米国に黒人初のオバマ政権が誕生し、10年はサッカーW杯が南アで行われる。この今を捉えるニュース感覚というのもすごい。

舞台は27年間、収監されていたマンデラが解放された南アフリカ。ラグビー代表チームは白人社会の象徴的な存在だった。敗北を機に、アパルトヘイト政策からの脱却に成功した黒人の評議会はラグビー代表のチーム名とカラーを変えることを圧倒的多数決で可決する。

しかし、大統領になったマンデラは白人と黒人がひとつになるためには、チームの存続が不可欠と熱弁し、票をひっくり返す。その信念にリーダーたるを感じる。

「インクビクタス」(invictus)とは「不敗」「決して負けない」といった意味。収監されながらも、27年間、信念を曲げなかったマンデラ。弱小チームから這い上がるラグビー代表。その姿に高揚するスタジアムを埋め尽くした群集。場外のそして、子供、白人、黒人と、様々な年代、人種で構成される南アフリカの国民。

そんな姿がクライマックスに向かって、ひとつに登りつめていく。世界最強のオールブラックスとの決勝シーンは涙が自然とこぼれた。

ラクビーシーン、スタジアムのモブシーンもリアルで迫力満点。モブ(群集)シーンは合成だが、超自然。監督の技量は群衆シーンの描き方でわかる。どうして、弱小チームが強くなったのかは正直、よく描けていないのだが、それをうやむやにするのがマット・デイモンだ。おそらく肉体改造して、役に臨んでいる。筋肉すごすぎ。

こうやって、書いているだけで思い出し泣きしそうだ。いかん。イーストウッドにやはり外れなし。

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2009年12月30日 (水)

「フォースカインド」★★★~「アバター」の後に見ちゃうとつらいかな

シネプレックス幕張21:45~。客数約20人。

特に見たかったわけではないのですが、時間があったので、前知識もなく、たまたま。主演が「フィフス・エレメント」「バイオハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチだったと知ったくらい。

女優に、こんなこと言ってはいけないけど、年取ったなぁ、というのが第一印象。実はミラ様にはお会いしたことがある。確か2001年2月ごろだったと思うけれど、「バイオハザード」のロケがベルリンであった。

劇中、ハイブという研究施設が出てくる。地上とハイブをつなぐ列車のシーンが当時、未開通のベルリンの地下鉄で行われたのだ。その時は長身と整った顔立ちに圧倒された。だから、思わずミラ様とお呼びするわけです。ミラ様はその後、「バイオハザード」シリーズのアリス役が当たり役になったのはご存知の通り。

調べてみると、ミラ様も当年34歳。2人の子持ちという役柄だし、年取ったように見えるのも仕方ない。海外の女優さんは役になりきるためには美しさを犠牲にする。この割り切りは日本の女優さんにはなかなかできない。

映画はミラ・ジョヴォヴィッチ本人の語りから始まる。その説明によれば、この映画はある記録映像と再現映像で構成されている、という。

ミラ様が演じるのは記録映像に出てくる精神分析医。米アラスカ州ノームで不眠症の患者が続出。そのナゾを解き明かそうとするうちに、宇宙人による拉致事件があった…というストーリー。

「フォース・カインド」とは「第4種」のこと。UFOとの接近遭遇についての専門用語。かのスピルバーグの「未知との遭遇」は原題「Close Encounters of the Third Kind」で、宇宙人との接触「第三種接近遭遇」を扱ったものであった。「第4種」とは宇宙人による拉致、誘拐のこと。

「Xファイル」などでもおなじみの素材なのだが、工夫しているのはドキュメンタリー的な手法を使っていること。分割画面で「記録映像」と再現映像をミックスしている。

この辺が肝なので、見る人のために多くは語らないでおく。ただ言えるのは、宇宙先住民と人類の遭遇を描いた「アバター」を見た後に、こっちを見ると、正直つらい。思わず、「未知との遭遇」を見直したくなる。

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2009年12月25日 (金)
「アバター」★★★★★3Dの映像革命よりもキャメロンの世界観だ

ネタバレOKの方、及び既に映画を見たという方はtwitterの方で話しましょう。

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2009年12月25日 (金)

「アバター」(DVD 4/23発売)★★★★ 3Dの映像革命よりもキャメロンの世界観だ

23日午後9時から、シネプレックス幕張での最終回。客入りは4割程度。3Dシアター、2000円。

iPhoneのアプリ「大辞林」でアバターを引くと以下の通り。

大辞林大辞林

【avatar】アバター 〔サンスクリット語で「地上に降りた神の化身」の意〕 インターネット上で,顔・髪形・服装・持ち物などを自由に選択してつくったオリジナルのキャラクター。自分の分身として,ネットワーク・ゲームやチャットルーム,掲示板などで利用する。

当初、映像を見た時は「不気味なキャラクターだな」と思い、あまり見る気がしなかった、というのが正直な感想でした。

こんな人は少なくないのでは。しかし、これは見るべし、です。

映像革命とも言える3Dのすごさが評判になっていますが、それよりも、ジェームズ・キャメロン監督の世界観に圧倒されます。例えるなら、「2001年宇宙の旅」を見た時の衝撃とでも言いましょうか。

キャメロン監督は3D映画を作りたかったのではなく、その世界観を映像化するのに技術が追いついた、ということなんでしょう。

主人公は半身不随、車椅子の退役軍人ジェイク。科学者だった双子の兄が不慮の事故で亡くなったことから、地球よりはるかに離れた衛星パンドラに赴きます。パンドラの地下には高価な鉱石があるのですが、それにはナヴィという原住民の存在が邪魔。そこで、地球人の遺伝子とナヴィの遺伝子を組み合わせた人工生物「アバター」を作り出し、ナヴィへのコンタクトを進めようとするわけです。

ジェイクの任務は、そのアバターを操り、ナヴィと接触し、情報収集することであったのですが、やがて、考えを変えていきます。一方、地球人たちは外交が成功しないと分かると、武力行使に動き出す。ジェイクは地球人、ナヴィの間で苦悩。その判断は?

映画にはシンプルで寓話的。その中にキャメロン監督は多くのメッセージを詰め込んでいます。

アバターを通じて、主人公がアイデンティティを確立する話でもあるし、異種コミュニケーションの話でもある。知らない者同士がアバターを借りて、心を通じ、新しい価値観を得ていく姿はまさにインターネット社会のようにも思えます。

また、すべての生物に霊が宿るといったアミニズム的な思想も全面に出ています。

そんな平和的な惑星に対して、武力で踏み込んでいく地球人の姿は、白人のインディアン攻撃のようにも見え、植民地主義や戦争への内省も感じます。

これはアメリカ人の価値観が静かに変わりつつある現れでもありましょう。全体的なトーンとしては宮崎駿、古くは手塚治虫ら日本のクリエーターの影響も感じられます。(※キャメロン監督は日本の新聞社でのインタビューでも宮崎駿監督の影響を認めている)

3D映像については実写部分は立体感がありますが、CG部分は平板な印象。同じく3Dのアニメ「カールじいさんと空飛ぶ家」(未見)との比較もしてみたい。

映画産業は3Dの流れに向かうのは必至。各劇場にとっては設備投資に金がかかるのですが、映像がテレビ、DVD、ブルーレイ、ネット配信など多様化する中、大スクリーン、音響、迫力ある映像は劇場の専売特許。「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」がDVD発売発表後も客足が悪くない、というのもその一例でしょう。

3D映像は今後、大きな武器になります。その歴史を刻むであろう「アバター」「カールじいさん」が作品の質としても高く評価されているのは3D化の流れを加速するでしょう。

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2009年12月 4日 (金)

映画「風が強く吹いている」★★★★

映画館がすいていると、「ゆっくり見られるなぁ、ラッキー」と思うのですが、いい映画だと、「もっと人に見られて、いい映画なのに」と思ってしまう。

「風が強く吹いている」はそんな映画でした。

蘇我のシネコン「XYZ」土曜深夜23時55分の回。窓口に行くと、「全部空いています」。

つまり、自分以外の客はゼロということでした。大きなスクリーンを独り占めです。少し始まってから、女性客が入ってきましたが、客は2人。深夜の回とはいえ、大丈夫なの? 

ストーリーは、廃部寸前の陸上部が一念発起して、箱根駅伝を目指すというもの。原作は三浦しをんの同名小説。

箱根駅伝は大学の長距離ランナーにとっては頂点。廃部寸前の陸上部が少し頑張ったからといって、出場できるわけがない。

まさにその通りなんだけど、映画を見ると、その「ウソ」を受け入れてしまう。

日本のスポーツ映画にありがちな欠点は、スポーツの描写がヘタなこと。第一に、演者が身体的にアスリートに見えないんです。

ところが、この映画でエース走者を演じる林遣都がすごい。上体はブレることなく、しなやかに走る抜ける。ホンモノの陸上選手の走りを見せる。だから、シラケることなく、作品にはまりこんでしまう。

競技の面で感心するのは林だけど、演技とストーリーで引っ張るのは、部長役の小出恵介です(※いろんな映画でいいところを見せてくれるのですが、賞からは少し縁遠いなぁ)。おんぼろ寮で炊事、洗濯をこなし、さらに監督的な役割も担っている。

廃部寸前の陸上部は「ワケあり」ばかり。半分、素人のような選手もいるが、9か月で立派な選手に指導していく。彼がしっかりとしたビジョンを見せて、実現に向けて奮起するからこそ、部員がついていく。

箱根駅伝のシーンは実際の駅伝との合成、編集処理だと思うが、うまくいっている。選手10人の描き分けにも成功。ひとつのタスキがつながっていくように、演者のアンサンブルを奏でる。

スポーツというのは、「生まれ持ったもの(天賦の才能)」によるものが大きい。バスケットボールやバレーボールは、どう考えても、背の低い日本人には不利だ。しかし、長距離ランは努力によって、報われる部分も多いスポーツだという。日本人がマラソンを見たり、実際にやるのはそんな国民性が反映されているのだと思う。

この映画は見たら、たいていの人は気に入ってもらえると思う。

客が入っていないのは宣伝が足りないのだろう。聞けば、製作費が予想以上にかかって、宣伝費まで回せなかったということ。いい映画を作っても、見てもらえなかったら、意味がない。

とっても惜しい。だから、応援します。

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2009年12月 3日 (木)

マイケル・ジャクソン「THIS IS IT」★★★★★

今年の検索ワードNo.1は「マイケル」だそうです。もちろん、あのマイケル・ジャクソンのこと。

晩年はスキャンダルまみれでしたが、やっぱり、スーパースター。夏に予定されたイギリス公演のリハーサルを収めたドキュメンタリー「THIS IS IT」がamazonでは11月30日の予約初日だけで3万枚という記録になりました。すごい。

amazonのThIS IS IT特集

「THIS IS IT」は当初、2週限定でロードショー。あまりの反響の大きさにさらに2週の延長が決まった。

僕はその延長の折にようやく見れたのだけど、「グラン・トリノ」と並ぶ今年の傑作だった。

冒頭、ステージに立つマイケル。実は1曲目から涙がこぼれてしまった。「スリラー」「Bad」といった彼の全盛期に育った人間にとっては、彼がスクリーンにいるだけで、まいってしまう。

公演名「This is it」。これがそれなんだ。

本公演を自身の集大成にしようとしたマイケルの意気込みが伝わってくる。

マイケルは歌い、笑い、時にはスタッフを叱咤する。時に厳しい言葉もかけるが、その後で「怒っているんじゃないよ、L.O.V.Eなんだ」とフォローを入れる。その姿は晩年の奇人マイケルではなく、アフリカの子供たちのことを思い、地球環境の将来を憂いていた全盛期のマイケル。永遠のピーター・パンであったマイケル・ジャクソンだった。

代表曲「Heal the world」ではこんなことも言う。
「地球は今、病んでいる。それは誰かがやるではダメなんだ。僕らがやるんだ」

このドキュメンタリーはマイケルの最後の贈り物といっていいでしょう。

死がなかったら、リハーサル風景がこんな形で世の中に出ることはなかった。マイケルは演出家に任せるだけでなく、曲の細かなトーンから演出全般までコントロールしていたことも分かる。その偉大さが改めて明かされるわけです。

惜しむくは、このステージの幕が開けなかったことですね。

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2009年10月27日 (火)

映画「沈まぬ太陽」

すっかりご無沙汰になってしまいました。

通常の業務に加え、年末のボーナス闘争を控え、多忙な日々が続いています。

昨秋来、続いている世界不況、業界の構造的不況が加速度的に進んでおり、ボーナスは●%カットになりそうという悲観的な予測が出る中、なんとか組合員の生活を守るのが執行部の責務だと考え、頭を悩ませている毎日でした。

そんな中、私的な日記も書く気にもなれず、ズルズルと。気が付けば、20日間以上、書かなかったんですね。もし、更新を楽しみにしてくれた方がいたのなら、すみません。また、「あいつ、どうしたんだろう」と心配してくださった方がいたのなら、感謝を申し上げます。

さて、久々に公開初日に映画を見ました。山崎豊子原作の「沈まぬ太陽」です。公開を待ち遠しく思った映画は本当に久しくありませんでした。この日を逃すと、3時間22分の作品を見られる機会は先になってしまうと思い、24日深夜に蘇我のシネコン「XYZ」に駆け込みました。

原作は1999年、徳間書店の故徳間康快社長が大映・東映の共同製作すると発表した際に読みました。10年の時を経て、再読していますが、当時は気が付かなかった思いが生まれています。それについては後日。

映画の企画はその後、徳間さんがお亡くなりになり、フジテレビが映画化を立ち上げましたが、外部の圧力、内部的な配慮の中で立ち消えになり、ようやく角川書店を中心に映画化の企画が進みました。

この3度目の企画すら、JAL側から様々な圧力があったようで、作品は完成しても公開はできないのではないか、と危ぶまれていました。そうした格闘は主演の渡辺謙のさまざまなインタビューでかいま見ることもできると思います。

映画は原作をよく知っている人には不満の声もあるかもしれません。正直言うと、このシーンははずせないだろうと思った場面もカットされていました。しかし、この大長編をわずか3時間22分に収めるわけですから、相当大胆なカットを敢行しなければなりません。

脚本家は断腸の思いで割愛し、そのエッセンスを伝えようとしたのでしょう。時間や条件を考えれば、よくできた脚本だったと思います。また、若松節郎監督にとってもベストムービーでしょう。手堅い演出でまとめています。

3時間22分。

インターミッションがあえい、異例の長さなんでしょうけど、まったく長さは感じず、むしろ、あと20分くらい長くてもよかったのではとすら感じました。それは作家、山崎豊子の執念であり、この映画に参加したスタッフ、キャストの力なのではないか。素直にそう思えるのです。

御巣鷹山での事故は1985年。521人の尊い命を奪った事故から、24年が経過しました。映画は、亡くなった方々の声なき声を代弁しています。さらに、人間はいかに生きるべきなのかを見せてくれます。

細部には不満はあるわけだけど、よくぞ映画にしてくれた、という思いです。今、すべての人が見るべき映画だと思います。

誰しも、いろんなつらいことはあります。でも、僕らは生きている。だから、それに向き合い、明日から頑張りましょう。

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2009年5月20日 (水)

「グラン・トリノ」★★★★★

クリント・イーストウッドの監督最新作「グラン・トリノ」は芝刈りをしたくなる映画だ。

米ミシガンを舞台に、米フォードをリタイアした人種差別主義者の元機械工(イーストウッド)とアジア系移民家族の交流を描く。

映画は例によって、イーストウッドらしい切れ味で現代社会の問題を取り上げていますが、会話はいちいち過剰なまでに品がなく、毒があって笑ってしまう。アメリカではイーストウッド監督作最大のヒットとなり、傑作との評判高い。以下の主題歌もよいです。

物語は妻をなくしたところから始まる。生活費には困っていないようで、時間をもて余している。だから、手押し式の器械で芝を刈る。

この芝が実に美しい。

そして、玄関のウッドデッキから日向ぼっこをしながら、芝を眺めて、ご満悦。ブルーワーカーが愛飲する安ビールを飲み、呆としている。時折、目の前で起きる出来事やアジア系の隣人に毒を吐くだけ。

隣人が敷地の芝を入ろうものなら、「俺の芝からどけ」とダーティ・ハリーばりに怒鳴り散らす。このセルフパロディもおかしい。そんな彼がアジア系移民と出会い、変わっていく姿は映画のキモとなっています。

もちろん僕なら、イーストウッドの芝には入らない。怖いから。

また、DIYerにはグラン・トリノや工具を収めたガレージも必見。


SHONAN GARAGING 【SG-1】 3台収容タイプ

ガレージ。いいですよねぇ。我が家にはガレージはなく、自転車置き場(笑)です。隣接して植えた薔薇が見頃を迎えました。

恋心(Lumix G1 NOKTON 40mm f1.4 S.C) 薔薇

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2009年5月15日 (金)

カンヌ国際映画祭開幕~注目は菊地凛子

カンヌ国際映画祭が13日、開幕しました。今年、日本映画はコンペティション部門に選ばれませんでしたが、菊地凛子が主演する仏映画「マップ・オブ・ザ・サウンズ・オブ・トウキョウ」が出品されています。予告編には菊地凛子の全裸シーンも。予告編では、この手の場面はカットされることが多いですが、ちょっとビックリ。

「バベル」はいい映画でしたね。

10数年前のカンヌでのスナップショット。もちろん、フィルム。普通のコンパクトカメラで撮影したものですが、デジタルとは質感が違いますね。保存状態が悪く、傷も目立つけど。

送信者 cannes

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2008年9月28日 (日)

映画「20世紀少年」★★★

最近、映画を見る時間がない。というか、何をするにも時間がないのだが…。

26日(金)午後11時すぎに帰ることができたので、蘇我にあるシネコン、XYZに行ってきた。24時からの上映。深夜営業の映画館はありがたい。料金も1200円。「おくりびと」「アキレスと亀」「トウキョウソナタ」など気になる作品はあるが、選んだのは「20世紀少年」(★★★=5点満点)。

浦沢直樹の同名コミックが原作。舞台は20世紀の終わりの東京。主人公はロッカーの夢に破れ、今は行方不明の姉が残した赤子を育てるコンビニ店長のケンジ。気乗りしないままに出た小学校の同窓会で、妙な話を耳にする。今、世の中で起こっている謎の伝染病や社会事件は小学校時代、秘密基地でケンジが書いた「よげんの書」にある悪の組織の世界征服のシナリオにそっくりだ、と。仲間の誰かが実行しているらしい。ケンジは仲間ともに解明に乗り出すが…。

子供が書いた荒唐無稽な話しが現実になるというストーリーは面白い。細菌兵器、カルト教団…。オウム事件後に書かれた原作は、荒唐無稽さの中にリアルさもある。

少年時代のエピソードは誰もが経験している類いのものであり、草むらの秘密基地、駄菓子屋、大阪万博、平凡パンチといった70年代の風景はノスタルジックな思いに駆り立てる。

大人になって、忘れてしまった冒険心、正義感、夢。それらはセンチメンタルな思いとそうはできない大人になった僕たちにちょっとした罪悪感を「プレセント」してくれるのだ。原作は読んではいないが、これは原作が持っている魅力ではないか、と思う。

では、映画としてどうなのか?と言えば、面白かった反面、後半部に不満が残る。

普通の人間がヒーローにならざるを得ない状況に陥るというストーリーは、最近、ヒットしているヒーローものの流れで、「スパイダーマン」や米人気ドラマ「HEROES」がそれに当たる。

ヒーローというのは、社会においては突然変異の異物である。社会から待ち望まれている一方、「浮いた存在」である。それゆえ、ヒーローたちは悩む。その葛藤がドラマが進んでいく原動力となっている。

そこを描くには、個を描くだけではなく、個と集団、社会との関わりを描くべきだと思う。

ケンジは社会とどう関わっているのか?
パニックが起こった時、人々はどういう行動を取るのか?
カルト教団はどういったことを訴え、勢力を伸ばしたのか。
謎の細菌は新聞やテレビでは報じられるわけだが、政府はどう対策を取るのか、また、空港爆破といった大事件も起こるわけだが、社会はどう反応しているのか。あるべきシーンが欠けているように思える。

ストーリーは壮大なのだが、物語が動いている部分は実は狭い。

劇中ではケンジのコンビニが炎上する場面が出てくる。閑古鳥が鳴いているような店に、カルト教団の信徒がどっと押し寄せるのだが、大騒ぎになるのに、警察も来なければ、野次馬も集まらない。

クライマックス場面も自衛隊機が出撃するくらいの国家的危機にも関わらず、戦いを挑むのは主人公たちだけ。
カルト教団のビルに乗り込むシーンも、無人のビルの入り口で、「開けろ」と常盤貴子が叫んでみたりとナンセンスなシーンが目立つ。「開けろ」と言って、開けてくれるなら、世話はない。

本来、面白くなるはずの後半部分は非常に雜な描写が目立つのが残念だ。

映画は小さな嘘の積み重ねでなりたっている。そこはしっかり嘘の塗りかさねをしてほしい。

映画はコミックファンからは否定的な意見も聞かれる。多分、コミックは丁寧に描かれていて、もっと面白いのだと思うけど。

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2008年6月29日 (日)

マジックアワーONザ・マジックアワー


(GR DIGITAL2)

エクスワイジー・シネマズ蘇我に映画を見に行きました。ちょうどマジックアワー(夕暮れ時)だったので、映画ポスターとあわせて千葉の海を。今夜の空は赤があまりでていなくて、物足りない感じだったが、海越しにJFEの工場も撮ってみた。

僕は「僕の彼女はサイボーク」、配偶者と娘は「相棒」をチョイスした。

この際だから、現在、公開中の映画(邦画ばかりだな)で見たものをいくつかメモ程度に書いておく。関連オススメ映画もあわせて。

「ぐるりのこと」★★★★
橋口作品を見ると、年齢に応じて作品を作っていると感じる。ストーリーはいろんなことが起こる割には、意外と淡々としている。しかし、飽きさせない。もっと作品を撮るべき監督だ。主演のリリー・フランキーと木村多江がいい。リリーの新人賞は当確。

「僕の彼女はサイボーグ」★★★1/2
綾瀬はるかがこんなにいいとは思わなかった。目の動きに注目。「ザ・マジックアワー」の彼女もいい。

「劇場版 相棒」★★★
劇場版ということで、間口を広げすぎて散漫になった感あり。相棒ファンの2人の意見。娘は「面白かった」というが、配偶者は冷静に63点と評していた。


我が家には全DVDがある(笑)

「ザ・マジックアワー」★★★
今回もビリー・ワイルダーをほうふつとさせるお話。最後まで見せる腕はさすがだが、おとぎ話にも度が過ぎたかも。話にムリがある。

「築地魚河岸三代目」★★★
40歳を越えて、30歳風の熱血青年を演じられるのは大沢たかおならでは。しかし、誰に見せたい映画なのかはっきりしない。しっかり作ってはいるが、松竹がもくろむ「男はつらいよ」のようなシリーズ化は厳しそう。当たっていないようだ。

「花より男子ファイナル」★
「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」★

奇しくも、マツジュン映画に辛い点がついたが、「花男」はオリジナル脚本がひどい。ストーリーにもなっていない。「三悪人」リメーク版はオリジナル脚本にあったヤマがまるでない。製作者の側に問題がある。

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